「育休中の生活費に不安があるから、副業を考えている。」
この記事では、そのような方に向けて、「育児休暇中に副業を行うにあたっては、どのような働き方が合理的か。」を検討した結果を記載します!
なお、育児休暇の間に始められるオススメの副業は当サイトの記事「育休中におすすめの副業は何か?注意点は?」にまとめていますので、こちらも是非ご覧ください!
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1. 育休中の副業が許されるか
最初に、そもそも育休中に副業することは、許されるのでしょうか。
厚生労働省ウェブサイトには、育休中の就労に関し、次の記載があります。
育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。
しかし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできます。
厚生労働省|育児休業中の就労について
この記載から、育休中も、労働者側が望むのであれば、働くことができることが分かります。
他方で、日本においては、副業を許容する会社も増えてきてはいるものの、副業自体を禁止している会社も一定数存在します。
一般社団法人日本経済団体連合会によるアンケート調査では、次のような結果が得られています。
特に中小規模の会社では、副業が認められない傾向にあるといえます。
育休中の副業を始めるにあたっては、会社の就業規則等を確認し、自分の会社で副業が許されているのかを確認する必要があるでしょう。
2. 副業と育児休業給付金
副業が許容されていることが確認できたら、次に気になるのは、育休中の副業と育児休業給付金の関係ではないでしょうか。
2.1 育児休業給付金の不支給可能性
まず、育休中に副業した場合には、育児休業給付金が支給されない可能性があります。
ざっくり言えば、「1か月に11日以上かつ80時間を超えて」副業すると、育児休業給付金は支給されません。
根拠となるのは、雇用保険法施行規則の次の規定です。
育児休業給付金は、被保険者…が…休業(…支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日(10日を超える場合にあつては、公共職業安定所長が就業をしていると認める時間が80時間)以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。
雇用保険法施行規則第101条の22
この規定からは、「公共職業安定所長が就業をしていると認める日数」が10日(10日を超える場合には80時間)以下である場合に限って育児休業給付金が支給されることが読み取れます。
そのため、1か月に11日以上かつ80時間を超えて副業した場合には、育児休業給付金は支払われないと考えられます。
雇用保険に関する業務取扱要領では、この日数及び時間の算定にあたって「被保険者となっていない事業所での就業日数・時間も含める。」との記載があります。したがって、副業先で被保険者になっていなくても、副業先での勤務時間が考慮されることが分かります。
では、副業先で業務委託を受けて働く場合には「公共職業安定所長が就業をしていると認める日数(又は時間)」にカウントされるのでしょうか。
この点については、上記業務取扱要領等に明確な記載はありませんでした。そして、インターネット上には、どちらの見解の記事も複数見つかりました。
ただ、次の点から、業務委託先として働く場合も「公共職業安定所長が就業をしていると認める日数(又は時間)」に入ると考えておく方が良いように思われます。
- 雇用保険法では育児休業給付金以外の文脈でも「就業」という言葉が使用されている。たとえば、「就業促進手当」が用意されている。そして、就業促進手当は、雇用された場合に限らず、個人事業主として開業した場合でも支払われる。
- そもそも育児休業給付金は、育児中に休業を取得して子どもを養育する期間を取りやすくするために設けられているものである。そのため、子どもの養育に費やしていない点で、雇用契約の下での労働と業務委託契約の下での業務を区別する理由がない。
ただし、業務委託契約の下での業務日数や業務時間を公共職業安定所長が把握することができるのかは、一応別の問題になると考えます。実際には、これらを把握するのは難しいでしょう。
2.2 育児休業給付金の減額可能性
次に、育休中に副業した場合の育児休業給付金の減額可能性を考えます。
結論から言えば、育休中の副業によって育児休業給付金が減額される可能性はないと考えられます。
雇用保険法には、次の規定があります。
(省略)育児休業をした被保険者に当該被保険者を雇用している事業主から支給単位期間に賃金が支払われた場合において、当該賃金の額に当該支給単位期間における育児休業給付金の額を加えて得た額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額以上であるときは、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額から当該賃金の額を減じて得た額を、当該支給単位期間における育児休業給付金の額とする。この場合において、当該賃金の額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額以上であるときは、第一項の規定にかかわらず、当該賃金が支払われた支給単位期間については、育児休業給付金は、支給しない。
雇用保険法第61条の7
この規定は育児休業給付金の減額可能性に言及するものですが、「当該被保険者を雇用している事業主から支給単位期間に賃金が支払われた場合」を前提としています。
そのため、副業の場合には適用がないと考えられます。
3. 育休中の副業と社会保険料
育休中には育児休業給付金が支払われるほか、基本的に、社会保険料が免除されます。
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます
国民年金機構|厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)
この根拠は、健康保険料の場合、次の規定と考えられます。
育児休業等をしている被保険者…が使用される事業所の事業主が…保険者等に申出をしたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める月の当該被保険者に関する保険料…は、徴収しない。
健康保険法第159条
また、厚生年金の場合、次の規定と考えられます。
育児休業等をしている被保険者…が使用される事業所の事業主が…実施機関に申出をしたときは、前条第二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める月の当該被保険者に係る保険料…の徴収は行わない。
厚生年金保険法第81条の2
このような規定の書きぶりに鑑みれば、育休中に副業をしたとしても、それが育児休業給付金を受け取ることができる範囲内のものであれば、基本的に、社会保険料の免除を受けられると考えられます。
副業先の事業所で社会保険に加入することになった場合には、社会保険料の免除が受けられなくなる可能性があります。副業先で週20時間以上勤務すると、社会保険料に加入することになる可能性があります。
なお、国民健康保険や国民年金に関しては、このような育休中の免除制度は現時点ではありません。しかし、2026年度中に育休中の国民年金保険料が免除される制度をスタートさせることが現実味を帯びてきています。
厚生労働省は、育児中の自営業者やフリーランスらの国民年金保険料について、子どもが1歳になるまで免除とする検討に入った。2026年度中に実施する方針で、国民年金に加入していれば両親とも対象にする。
毎日新聞「育児中の自営業ら、子が1歳まで国民年金保険料免除へ 厚労省案」
国民健康保険の保険料については、育休中ではありませんが、産前産後の保険料免除が2024年1月にスタートしています(松山市「産前産後期間国民健康保険料の軽減措置(産前産後期間に係る保険料軽減届出書)」など)。また、産前産後の保険料免除については、国民年金保険料に関しても既に用意されています。
4. 育休中の副業と確定申告
ここまで、育休中の副業と育児休業給付金の関係や、育休中の副業と社会保険料免除の関係を確認してきました。
続いて、育休中の副業と確定申告の関係について記載します。
端的に言えば、副業の収入が年間20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
これに対し、副業の収入が年間20万円を超える場合には、確定申告をするようにしましょう。
確定申告にあたっては、次のような会計ソフトが便利でしょう。
上記では、雇用契約のある本業があることを前提にしています。この点にはご注意ください。
5. 育休中の副業と配偶者控除
知らない人も多い印象ですが、会社員同士の夫婦であっても、育休中は配偶者控除が受けられる可能性があります。
配偶者控除の適用対象となれば、所得税の対象となる所得の金額を下げることができるため、所得税を減額できることになります。
育休中に開業届を提出し、個人事業主やフリーランスとして一定の収入を得てしまった場合、本来は受けられた配偶者控除を受けられない可能性があります。
配偶者控除を受けるためには、年間所得が48万円以下である必要があります。
この48万円という金額も、育休中に副業を通じていくらまで収入を得るかを考える上で、一つの基準になるかもしれません。
6. 育休中の副業と開業届
育休中に個人事業主やフリーランスとしての副業を始めることを検討されている方は、個人事業主やフリーランスとして行う事業に関して、開業届を出す必要性も認識しておく必要があるでしょう。
育児休暇取得中に個人事業主やフリーランスとして副業を始めるときに、提出が必要となる開業届については、当サイトの次の記事もご参照ください!
7. まとめ
この記事では、育休中の副業を考えている方に向けて、育休中の副業と育児休業給付金との関係や、育休中の副業と社会保険料免除の関係、育休中の副業と確定申告の関係を記載しました。
育児休業給付金を全額受け取るとともに、社会保険料免除も受けておきたい方は、1か月あたり10日以下または80時間以下にとどめておくのが良いでしょう。
また、確定申告も煩わしいと考える方は、年間20万円以内に納める方が良いでしょう。
この記事が育休中の副業を考えている方の参考になることを願っています。