育児に専念する産休・育休期間、子どもの成長をしっかりと見ていられるのは幸せなことです。しかし、「社会からおいていかれている気がする。」と不安に感じたり、「せっかく時間があるから、復帰後のためになにかしたい。」と、産休・育休中にとれる資格を探している方も多いのではないでしょうか。
私は、1人目の産後は何もかも初めてのことだったので、精神的にも体力的にもそのようなことを考える余裕もなかったのですが、2人目になると、慣れもあり余裕ができてきたことで、「何かしたい!」と思うようになりました。そして、独学でとれる資格をいろいろと検索していくなかで、保育士資格に出会ったのです!
保育士の資格に興味をもつ方のなかには、「漠然とした不安から資格取得を目指す。」という方だけではなく、「子どもに関わる仕事にキャリアチェンジしたい。」「保育園の保育士と対等に話したい。」「プロ目線での子育てを勉強したい。」という方もいるかと思います。
この記事では、育休中に独学でも取得できる魅力的な「保育士資格」について紹介します。
※ この記事は、実際に育休中に保育士の資格を取得した方に記事を執筆いただいています。当サイトでは、記事の正確性を維持するため、必要に応じ、貴重な経験や体験をされた方に執筆にご協力いただいています。
1. 保育士とは
保育士といえば、「保育園にいる先生」というイメージですよね!
法律では、どのような定義をされているのでしょう。
保育士は、児童福祉法に基づく国家資格で、「保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう」と定義されています。つまり、「保育士」の名称を使用して、専門的知識や技術を活用し、児童の保育や保護者への保育に関する指導をおこなう仕事をする人です。
保育士は、ただ単に子どもを預っていれば良いという仕事ではなく、教育も含めたさまざまな専門知識を駆使して行う仕事です。保育士資格は、これらの専門的な要件を満たしているということを公的に証明するために設けられている制度なのです。
厚生労働省|ハローミライの保育士|02 保育士になるには?
私は資格取得を検討した時に初めて保育士が国家資格だということを知りました。また、活躍の場も多岐にわたっているのです!これは、今後のキャリアアップや働き方の幅を広げるためにもチャンスだと思いました。
そして、保育士になるためには「保育士を養成する学校を卒業」または「保育士試験に合格」、と必ずしも養成学校を卒業していなくても良いのです。学校に通う時間もお金もない私にピッタリの資格でした。
では、保育士試験について見ていきましょう。
2. 保育士試験の概要
2.1 保育士試験の日程
保育士試験は前期と後期、年2回あります。令和6年の日程は下記のとおりです。
前期 | 申込期間:令和6年1月10日~1月30日 筆記試験:令和6年4月20日11:00~17:00、21日10:00~16:30 実技試験:令和6年6月30日 |
後期 | 申込期間:令和6年7月5日~7月25日 筆記試験:令和6年10月19日11:00~17:00、20日10:00~16:30 実技試験:令和6年12月8日 |
2.2 保育士試験の科目
保育士試験の科目は下記のとおりです。
<筆記試験>
1.保育原理
2.教育原理及び社会的養護
3.子どもの家庭福祉
4.社会福祉
5.保育の心理学
6.子どもの保健
7.子どもの食と栄養
8.保育実習理論
<実技試験>
1.音楽に関する技術
2.造形に関する技術
3.言語に関する技術
(上記より2分野を選択)
筆記試験の全科目に合格(6割以上取得)すると実技試験を受けることができます。もし一部の科目で不合格になってしまっても、合格した科目は3年間有効になるため、不合格科目だけ再受験ができます。ただ、育休期間中だけを考えると、一発合格を狙うのが良いかもしれません。
筆記試験は2日間にわたり、朝から夕方までかかるため、試験当日は子どもを預かってもらえる環境を準備しておく必要があります。実技試験は、合格者のみに案内され、会場や人によって集合時間や所要時間は異なりますが、半日はかかるとみておくと良いでしょう。
※ 保育士試験の試験科目の詳細は一般社団法人全国保育士養成協議会の「保育士試験を受ける方へ」もご参照ください。
3. 保育士免許を取得しようとした理由
私が保育士試験の勉強をはじめるきっかけは、2人目の出産直後、大学時代の後輩に会ったことでした。久しぶりにお互いママとして会い、子育てのことや自身のキャリアについて話していたところ、後輩から「実は保育士の資格をとろうと思っている」と聞き、非常に驚きました。何故なら、大学が商業系だったからです。
後輩との会話から、保育士が国家資格であること、保育士に関係のある学校を出ていなくても受験資格があることを知り、居ても立っても居られなくなりました。そこで、後輩とわかれてからすぐ保育士試験について調べ、勉強することを即決しました!
決断したポイントは3つあります。
- 独学で国家資格を目指せる
- 子育ての知識や経験が活かせる
- 仕事の幅を広げられる
3.1 独学で国家資格を目指せる
商業系の大学を卒業している私にとって、国家資格は憧れの資格でした。
しかし、国家資格といえば、当たり前ですが難易度が高いものが多く、また、専門の学校に通っている、もしくは関係する学部・学科を卒業している必要がある資格ばかりです。
そんな中、「保育士」は「保育士とは関係のない学部・学科でも受験資格がある」のです!
つまり、大卒・短大卒であれば、誰でも保育士を目指せるということです。私は、国家資格を取得するためのスタート地点に既に立っていることに気付きました。チャレンジするしかない!と当時の私の決断を一番後押しした理由でした。
※ 保育士試験の受験資格の詳細は一般社団法人全国保育士養成協議会の「受験資格」もご参照ください。
3.2 子育ての知識や経験が活かせる
保育士試験に挑戦したいという気持ちはあったものの、「学習内容が難しかったり、苦手分野だったりしたら諦めよう」と決めていました。そんな思いを胸に近所の書店に向かい、まずは保育士試験の参考書をめくってみました。そして、気付いたのです。
「育児経験のある人にとって、有利な内容になっている!」
当時、1人目が2歳だったため、乳児期は卒業し、幼児期に突入していました。そのため、「発達・発育」「保健」「感染症」「栄養」などの内容は、まさに今経験していることであり、1人目のときに育児本や母親学級で学んだ内容そのままでした。歴史や制度などを新たに覚える必要はありましたが、科目数が多い割にはゼロから学習しないといけない範囲は少なく、子育てに関する知識を得られると考えれば、興味がわいて、ワクワクしました。
3.3 仕事の幅を広げられる
保育士といえば、保育園で働くというイメージがありましたが、テレビで待機児童の問題からベビーシッターという職業も需要が増えてきていることを感じていました。そこで、あらためて、保育士はどこで働くことができるのかを調べてみました。
- 保育所
- 児童養護施設
- 知的障害児施設、知的障害児通園施設
- 盲ろうあ児施設
- 肢体不自由児施設
- 重症心身障害児施設
- 情緒障害児短期治療施設
- 乳児院、母子生活支援施設
- 児童厚生施設、児童自立支援施設
そのほか、ベビーシッター、イベント時の一時預かりスタッフ、病院・歯科医院の託児スタッフ、幼児教室の講師など幅広く求人があり、雇用形態も常勤、パート、契約社員、派遣と多岐にわたっていました。働く時間においても、午前のみ・午後のみのパートから夜勤保育士まで選択肢が多いなという印象を受けました。
このように、保育士について調べれば調べるほど、今挑戦すべき資格だと強く感じるようになり、取得を目指す決断をしました。
4. 保育士試験1次試験(筆記試験)の勉強
保育士試験の魅力はわかったけど、どうやって勉強するのが良いの?
学校に通わずに保育士試験の勉強をする方法は、
「通信講座を受ける」もしくは「市販のテキストで独学」です。
私は通信講座も検討はしましたが、金銭的な問題から市販のテキストでの独学を選びました。保育士試験を独学で合格するまでに使用したテキスト、また、苦労したこと、工夫したことをご紹介します。
4.1 保育士資格の勉強で使用した書籍と感想
私は、インターネット上のクチコミを検討し、書店で実際に手をとってみて、読みやすいテキストと過去問や予想問題が充実しているテキストに決めました。
それぞれのテキストをご紹介します。
文字の量や色、図などで非常に見やすいテキストでした。また、過去の試験の出題頻度の分析から単元の重要度が記載されているため、学習の強弱がつけやすかったです。試験に向けて覚えておきたい基本ポイントのまとめや関連語句の参照ページ、内容の理解を深める解説の記載があり、独学でもしっかりと理解しながら進められました。
過去5年分から厳選したテーマ別の過去問と予想模試2回分が入っている本テキストは、解説も充実しているため、間違えた問題の知識の確認をテキストで該当ページを探さなくてもすぐに復習できます。問題ごとに「基礎」「標準」「発展」と難易度がわかるようになっているため、覚えないといけない優先順位も明確化されていて、試験前の復習にも役立ちました。
4.2 保育士資格の勉強と育児の両立で苦労したこと
いざ、保育士資格の勉強をはじめてみると、育児と家事と資格勉強・・・やはり大変なことが多くありました。
①勉強時間の確保
1番のネックは勉強時間の確保です。独学で一発合格するためには、およそ100〜150時間程度の勉強時間が必要だと言われています。私は実際、6月に保育士資格試験への挑戦を決意し、10月に受験したため、勉強期間はおよそ4ヵ月弱、筆記試験のための勉強時間はおよそ160時間かかりました。
内容は育児の知識の復習もありましたが、そもそも試験の科目数が多いため、全範囲のテキストを読むだけでも時間がかかりました。テキストを読み進めていくと最初の範囲を忘れていってしまうため、とにかく集中して短期間でテキストを何周もしないといけない!と感じました。
私はもともと夜型だったため、子ども達の寝かしつけが終わった21時頃から24時頃をピークタイムとして、授乳で呼ばれる以外の時間は学習していました。朝型の人は早起きして学習するのもありですし、日中の子どもがお昼寝している間にちょこちょこ進めるのもありです!
②モチベーションの維持
独学で大変なことのひとつにモチベーションの維持があります。育児に家事に・・・毎日追われている中で、復職後の仕事にすぐ直結しない資格の勉強は非常に大変でした。同じ資格を目指す仲間がいる予備校や伴走してくれる先生のいる通信講座とは異なり、独学はひたすら自分との戦いでした。
③最新の情報収集
保育士試験では、法改正や最近注目されている保育分野でのニュースを問われる問題があります。独学で学習していた私は、自分で最新情報をチェックし、知識を更新していく必要がありました。テキストの勉強に追われる中で、最近の情勢を調べて必要な情報のみを取捨選択していくのは難しかったです。
4.3 保育士資格の勉強と育児の両立で工夫したこと
大変なことの多い勉強と育児の両立を乗り切るために工夫したこともあります。
①自分にプレッシャーをかける!
独学だったため、初期投資があまりかかっておらず、実際、やめようと思えばすぐにやめられる環境にありました。しかし、自分に甘い道を選ぶ傾向にあることは私自身がよくわかっていたので、今回はあえて自分にプレッシャーをかけていくことに決めました。
そして、おこなったことは、「周りに宣言する」ことです。
具体的な目標を口に出すことで、自分自身に目標をしっかり意識させること、また、夫だけではなく親や友人にも保育士資格の勉強していることを伝え、「諦める」という逃げ道をなくしていきました。
②子育ての知識の復習になる!という意識
「子育てに役立つ知識」という面もモチベーションの維持のために意識したことです。1人目の子育て時に既に学んでいた内容も多かったのですが、忘れている知識も多く、2人目を育てていく上で母親学級の復習!という意気込みで勉強していました。
また、学習している最中から実感していましたが、育児経験を理論的に理解し覚えていくことは、ママ友と話す際や子どもを預ける保育士と話す際に根拠を示すことができるので、自信を持って話せて、非常にメリットも多かったです。
③実技試験対策は子どもと一緒に!
筆記試験の学習は、暗記や過去問をひたすら解くことが多く、子どもと一緒にいる時間には取り組めませんでした。しかし、筆記試験に合格した後、実技試験の対策練習は子どもを巻き込んで一緒に楽しく取り組むようにしました。
実技試験は、音楽・造形・言語から2分野を選びます。私は音楽と言語を選びました。音楽では、インターネット上で初心者でも弾ける楽譜を使用しているお手本動画を探して譜面を作成しました。「多少ミスタッチをしても、明るく楽しそうに最後まで元気に歌うこと」がなによりも大切だという情報を見て、子ども達と一緒に歌って弾く練習をしました。 言語でも同様に、課題図書の中から自分が話しやすい話を選び、インターネットで読み聞かせをしている動画から制限時間にあうよう原稿を書き直しました。時間をはかりながら、子ども達相手に何度も練習をし、本番に向かいました。
5. 保育試験2次試験(実技試験)の対策と当日
5.1 実技試験の対策とかかった期間や時間
私は前述したとおり、音楽・造形・言語から、音楽と言語を選びました。
音楽(ピアノ)の対策
音楽は、2曲の課題曲をピアノもしくはギターのどちらかで弾きながら歌うという内容です。ピアノは会場に用意されていますが、ギターは自分のものを用意する必要があるため、しっかりとメンテナンスをして当日に臨みましょう。楽譜の持ち込みは可能です!
step1.自分のレベルにあった楽譜探し(動画サイトから楽譜を探し、書き起こす)
step2.ひたすら弾きながら歌う練習
言語(読み聞かせ)の対策
言語は、4つの課題話から1つを選び、3歳の幼児に対して3分くらいで読み聞かせることを想定しておこなう試験です。読み聞かせの内容は暗記が必要です!
step1.持ち時間内に終わる原稿(台本)を作成する
step2.ストップウォッチを使って時間内に話す練習
実技試験の対策には、音楽と言語の両方をあわせて、毎日1時間程度を1週間続けました。
5.2 実技試験当日の試験の流れ
当日は、実技試験を受ける全員が8:45に集合し、ガイダンスがあります。受付後、80〜100人ほどが入る教室でガイダンスを受け、そのまま教室で待機していました。
選ぶ科目の組み合わせによって試験の開始時刻が異なっているため、人によっては待機時間が非常に長くなる可能性もあるので、注意が必要です。
試験時間が近くなったら、それぞれの試験の待合室に移動しました。そして、順番が近くなると呼ばれ、2〜3人が試験室前に置かれた椅子に座って待ち、1人ずつ入室していくかたちです。もちろん、前の人のピアノの音、歌声、読み聞かせの声、ストップウォッチの音はよく聞こえます。緊張感が高まる時間でした。
私が実技試験をおこなった会場は、大学だったため、各教室での試験でした。30〜40人が入るような普通の教室です。少し距離のある椅子に試験官が2〜3人座っていました。
音楽の試験では、教室に入ると目の前にピアノがあり、数メートル先に試験官がいるかたちでした。私は歌声が試験官まで届くか不安になったことを覚えています。
言語の試験では、自分の椅子の前に5〜10個の椅子が置かれていました。そこに3歳の子どもが座っていることを想定して、目線や表現、声量などに気を付ける必要がありました。
5.3 実技試験当日の待ち時間の使い方
私は音楽と言語の試験の間の待ち時間は1時間程度と短い方でした。造形を選択した場合、4時間ほど待つ方もいるそうです。
音楽も言語も、笑顔で楽しそうにすることが大切だったので、待ち時間の間はリラックスするよう心掛けました。寒い日だったため、指がこわばらないように温かい飲み物を買って飲んだり、トイレに行っておいたり、何も考えないように趣味の読書の本を持参してまったく違うことを考えるようにしていました。対策はしっかりとしてきたと自分に言い聞かせ、最終確認は試験室前で待っている間にだけしました。
6. まとめ
保育士試験を勉強し、育休中でも毎日コツコツすき間時間で勉強すれば、独学でも国家資格の取得が可能だということがわかりました。もし、スケジュール管理に不安、やっぱりひとりだとモチベーションが維持できない、気軽に相談できる相手がほしい、という方は、通信講座で効率よく勉強するのも良いでしょう。
保育士試験の学習内容は、学習していると自身の子育てにつながる知識も多くあり、キャリアアップやキャリアチェンジだけではなく、育児や保育園選びにも活用できます。また、筆記試験は暗記がメインなので、努力すれば努力するほど、効果が出やすくもあります。
育休中に、家事と育児と勉強の両立は大変ですが、産休・育休中に今後の人生において役立つ知識を得られる「保育士」に挑戦してみてはいかがでしょうか。