育休中の生活費に充てるために副業を始めようとする方は、少なくありません。
この記事では、育休中に個人事業主やフリーランスとして副業を始めるにあたって開業届の提出が必要かについて、検討します!
なお、育休中にオススメの副業については、当サイトの別記事もご参照ください!
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1. 開業届の提出は義務なのか?
そもそも開業届を提出することは法令上の義務なのでしょうか。
開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
この開業届の提出は、所得税法で義務付けられています。
居住者…は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し…た場合には、…必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
所得税法第229条
したがって、日本の法令上、開業届の提出は義務付けられていることになります。
所得税法において、開業届を提出しなかった場合の罰則は設けられていませんが、育休中に新しく事業を開始する場合には、開業届を提出する必要がある点に注意しましょう。
2. 開業届を提出するメリットは?
では、法令の定めに基づいて開業届を提出すると、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。
一般的に、開業届を提出するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 青色申告によって最大65万円の控除を受けられること
- 屋号で銀行口座を開設できること
- 小規模企業共済に加入できること
以下、順に詳しく見ていきます。
2.1 青色申告によって最大65万円の控除を受けられること
開業届を提出する場合には、開業届に合わせて「所得税の青色申告承認申請書」を提出するのが一般的です。
この申請書を提出することで、確定申告で青色申告を選択することが可能になります。
青色申告を選択すると、特別の所得控除を受けられます。
所得税は、売上などの収入から必要経費を差し引いた金額である「所得」に税率を乗じることで、その具体的な金額が算出されます。
そのため、申告する所得の金額を下げることができれば、その分だけ、納付すべき所得税の金額を下げることができます。
青色申告を選択すると、この所得を最大65万円減額することできるメリットがあります。
※ 青色申告を選択した場合には、この特別控除以外にも、赤字を次年度に繰り越すことができるなど、多くのメリットを享受できます。開業届を提出する際には、所得税の青色申告承認申請書も忘れずに提出するようにしましょう。
※ 所得税の青色申告承認申請書を出した後になって、青色申告ではなく白色申告を選択したいと考えた場合には、青色申告をやめる手続きが必要になります。しかし、これは白色申告で確定申告書類を作成し、その書類を提出する時に同時に所得税の青色申告の取りやめ届出書を提出することで足りると考えられます。
2.2 屋号で銀行口座を開設できること
開業届を提出すると、多くの金融機関において、屋号で銀行口座を開設できるようになります。
屋号があると、対外的に取引をする上で信頼性が高まります。
育休中に個人事業主やフリーランスとして開業するにあたって開業届を出せば、このような信頼性向上のメリットを享受することもできるでしょう。
2.3 小規模企業共済に加入できること
開業届を提出することのメリットとして、小規模企業共済に加入できることも挙げられます。
国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。現在、全国で約159万人*の方が加入されています。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。将来に備えつつ、契約者の方がさまざまなメリットを受けられる、今日からおトクな制度です。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構|制度の概要
掛金の全額を所得控除できる点が、個人事業主やフリーランスにとってはありがたい制度です。
なお、小規模企業共済制度で支払われる退職金は、仮に自己破産などが必要になった場合でも、破産手続の中で没収されることがありません。その点でも、小規模企業共済に加入できることには大きな意味があるでしょう。
3. 育休中に開業届を提出する場合の注意点
ここまで見てきたとおり、育休中に個人事業主やフリーランスとして事業を開始する場合には、開業届を提出することが義務付けられており、それを提出することで複数のメリットを享受することができます。
しかし、育休中に個人事業主やフリーランスとして開業し、開業届を提出しようとする場合には、次の点に注意するようにしましょう。
3.1 副業が禁止されている可能性
まず、本業として雇用契約を締結している会社が副業を禁止している可能性があります。
就業規則などで副業が禁止されていないか、十分に確認するようにしましょう。
就業規則などで副業が禁止されている場合に副業をしたとしても、直ちに解雇等の懲戒処分が有効になるとは限りません。実際に、副業を理由とする解雇を無効と判断した裁判例も存在します(広島地判昭和59年12月18日・ 昭和59(ヨ)第380号など)。しかし、裁判手続への参加などの無駄な時間と費用が必要になる可能性があるため、就業規則などで副業が禁止されている場合には副業しない方が良いでしょう。
3.2 育児休業給付金が打ち切られるリスク
次に、育休中の副業に費やす時間が長くなると、育児休業給付金が打ち切られる可能性があります。
具体的には、1か月に11日以上かつ80時間を超えて副業した場合には、育児休業給付金は支払われないと考えられます。
詳細は当サイトの記事「育休中の副業はいくらまでが合理的か?業務委託の方が良い?」でも説明していますので、ご参照ください。
「業務委託の場合であれば、制限されない!」といったインターネット上の記事を多く見ますが、この解釈にはリスクがあると考えますので、その点も上記記事をご参照ください。
3.3 配偶者控除が受けられない可能性
知らない人も多い印象ですが、会社員同士の夫婦であっても、育休中は配偶者控除が受けられる可能性があります。
配偶者控除の適用対象となれば、所得税の対象となる所得の金額を下げることができるため、所得税を減額できることになります。
育休中に開業届を提出し、個人事業主やフリーランスとして一定の収入を得てしまった場合、本来は受けられた配偶者控除を受けられない可能性があります。
配偶者控除を受けるためには、年間所得が48万円以下である必要があります。
4. 育休中に開業届を提出する方法
育休中に開業届を提出するのは非常に簡単です。
国税庁のサイトから必要書類の書式をダウンロードして、必要事項を記載し、納税地を所轄する税務署長に提出すれば足ります。
必要書類の記載方法が分からないという方や、必要事項を適切に記載できているかが不安という方は、開業届の作成及び提出をアシストしてくれる無料サービスを使用することでも良いでしょう。
代表的な無料のサービスとしては、次のようなものが挙げられます。
なお、青色申告も考えている方は、開業届と同時に、「所得税の青色申告承認申請書」も提出するようにしましょう。
上記のサービスを使えば、この申請書の作成及び提出も簡単に行えます。
5. 最後に
この記事では、「育休中の個人事業主としての副業に開業届の提出は必要か?」と題し、育児休暇取得中に個人事業主やフリーランスとして副業をするにあたって開業届の提出が必要になるのか、どのように提出したら良いのかなどをご説明しました。
この記事の冒頭にも記載したとおり、事業を開始するにあたっては、開業届の提出が所得税法で義務付けられています。罰則はないとはいえ、法令を遵守する観点からは、開業届を提出すべきといえるでしょう。
開業届の作成及び提出に当たっては、上記freee開業やマネーフォワードクラウド開業届などを利用すると良いでしょう。
この記事が、育休中に個人事業主やフリーランスとして副業を始めようとしている方の参考になることを願っています。